今回のお家は3年前にリノベーションをお手伝いしたねぎぼうず文庫の道路を挟んだ向かいのお家。
施主さんはねぎぼうず文庫の奥田さんの息子さんご家族でした。
https://www.u-arc.net/works/facility/negibouzubunco/
最初にお会いしたのは2020の2月でした。
最初は京都市内に新築予定なので設計を依頼出来ないか?と相談をいただきねぎぼうず文庫でお話をすることになりました。
U設計室は京都市内の設計は出来ないけど、設計事務所やメーカーの選び方、お金のこと、デザインのこと、暮らしのこと等たくさんお話しました。
その中で リノベの話もさせて頂き、実家から道を挟んだおじいちゃんの家 が、いい家だから見てみよう!ということで見学することになりました。
元は機工場だったので平屋ながらも天井が高く
川沿いのお部屋は日当たりや景観が良いとても魅力的なお家でした。
こねぎさん夫妻は京都府内で勤務地が変わる職業の方で、家を持った地域の近隣に勤務出来るので、京都市内にこだわる必要はなく、コストや生活を考えると丹後へ移住するのもいいかも。というお話になりました。
その後、施主さんから「あの川沿いのおじいちゃん家を2世帯住宅にリノベする方向で計画を進める事にします!」と連絡をいただいき計画が進むことになりました。
丹後にまた素敵な家族が引っ越してくる事、そしてあんな素敵な建物をリノベするお手伝いさせてもらえる事がすごく嬉しくて、建築やっていてよかったなーっしみじみ思いました。
そんなこねぎさん家族は、現代的なシンプルな雰囲気とアンティークな雰囲気が好きで、家に残る思い出をとても大切にする方、道路側の素敵な集落の雰囲気と圧倒的な川側の景観をとりいれつつ、生活に合わせた動線に間取りを変えて、耐震・断熱補強をしっかりするフルリノベーションで計画しました。
道路側の外観はセメント瓦屋根、漆喰と板の外壁でした。
集落の雰囲気と馴染むように古色の板と漆喰壁の壁、防水性を向上させるためにセメント瓦をいぶし瓦に葺き替えました。接道する道沿いには少し半外部的なガレージ兼作業場の様なスペースを持っているお家が多く、現場を見に行った時に大豆の皮を取っている方を見かけたり、川へ降りて野菜が洗えるよう階段がついていたり、家と道や川が繋がりながら集落を形成している感じも素敵だったので、おじいちゃん家の車庫を残しつつ、子世帯用のカーポートも道路に開いた作りにしています。
玄関戸は奥さんのおばあちゃん家が空き家になっていて、蔵が2つもある立派なお家だったので蔵の内戸を持ってきてリメイクしました。
川側の外観は隣の畑や川、近所の神社等豊な自然環境に溶け込めるように板張りにしました。
減築と増築で家の周りに縁側を回して、日差しを遮りながら景観を取り込める気持ちの良い軒下をつくりました。
玄関を開けると、元の工場の架構をそのまま生かしつつ、中廊下の閉塞感をださないために天窓と正面には川までつながるデッキに目線が抜ける玄関ホール。
もともとこの場所に張ってあった床板は解体前にみんなでレスキューして、
現在は【まちまち案内所】の2階コワーキングスペースに張ってあります。
玄関を向いて右手には家族用のシューズクローゼット、左手はおじいちゃんのお家になっていて、アパートの共用廊下みたいな場所になっています。
シューズクローゼットの上には小さな隠れ家ロフトがあり、天窓の光を寝室に届ける役割も担っています。この場所の手すりは元々和室にあった欄間を活用しています。
川への眺望を生かした広いLDK。
特徴的な飾り窓はリノベ前の廊下から移設したもの。
リノベで窓の大きさや位置が変わったので、窓から見えるお庭の景色も美しく見える様に、楽遊の河辺さんに庭リノベしていただきました。写真はopenhouseで庭講習してくれている河辺さん。
キッチン横には雨の日でも洗濯物を干せるランドリールームがあり、晴れた日はデッキや庭に干せるように動線が確保してあります。
キッチンは洗い場と壁側のIHや収納がセパレートになっています。黒い壁やモルタルの重さを白いタイルや木の天井とkukuさんの1枚板テーブルで軽くしつつ黒目地でまとめた絶妙な空間。奥さんの家電や小物がばっちりハマっていていい感じ。
キッチン横から中廊下にアクセスします。この動線はリビングを通らないとプライベートスペースに行けない様にしたいという施主さんのこだわりポイント。
キッチンからアクセスの良いパントリー。奥さんがどこかで使いたかったヘリンボーンを天井に。
トイレの手洗いも兼ねたオープンな洗面所。ここはキッチンのゴミを外ゴミ箱に出せる勝手口への動線にもなっています。
脱衣はカゴとそれぞれのパジャマやタオルを置くだけのシンプルな空間。
寝室はベッドを置ける程度の大きさにして、横に4畳のファミリークローゼットを併設させています。また、中廊下で光が入らないのを玄関ロフトのハイサイドでカバーしています。
子ども室は成長に合わせて間仕切ることの出来る1室空間としています。
また、道路側の窓は室内窓を設置して外観を昔の工場の雰囲気が残せるようにしています。
撮影に行った日に、旦那さん兄弟や親戚が身長を刻んでいた柱の別の面にお子さんが身長を記録していて、このお家は素敵な息子さん家族に継承されたんだなー。と感動していました。
いずれ空き家になって、たくさんのお金を払って解体する日が来て、たくさんのゴミを出して(大きさを考えると50~80t)、跡形もなく消えていた未来もあったお家が、次の時代に継承されるお手伝いが出来た事。本当に幸せでした。
ちなみに、当初京都山科に建設予定でハウスメーカーさんに出してもらっていた見積額(約40坪)とリノベしたこのお家(55坪)を比べると約3000万円程安く済んでいます。土地の価格も入っているとはいえ一生背負う借金の額を考えると、
家づくりって、これから暮らしの事を家族でゆっくり考えるとても良い機会だと思っています。
仕事のこと、返済するお金のこと、子どもの教育や育てる環境、いづれ両親が衰えた時の事、その時に実家をだれが引き継ぐのか、など今の生活をする上で考えない事だけどいずれ直面する可能性があることをゆっくり考えるきっかけになる家づくりを出来る様に、これからも頑張ろうって思った素敵な家づくりでした。
ねぎぼうずの奥田さん、こねぎさん一家には本当にいろんな気づきをもらって感謝です。
また、難しい工事を請けてくださった和田建築工房さん、庭を素敵にリノベしてくださった庭・楽遊さん本当にありがとうございました。
長い長いブログにお付き合いいただきありがとうございました。リノベはブログが長くなる傾向にあり、後回しにしてしまう、、、。