【ミキモト化粧品とハイジさん家】
ハイジさん家族から家づくりの相談を最初にしてもらったのは、2019年の春。
峰山で空き家になっている物件を解体し化粧品販売、エステ、貸店舗、自宅にするというご相談でした。
最初に簡易なヒアリングを行ってから、一緒に物件を見に行きましたが、建物が大きく駐車場も取りづらいので一旦物件探しをしながら色んなケースを一緒に考えつつ最良の選択を探していきました。
最初に考えたのは市街地に土地を購入して化粧品店兼用住宅を建てるパターン。
良い点は市街地なので集客しやすくなる。旦那さんの職場が近くなる。等
一方で心配な点は、お父さんと協働で事業をしているため、お客さんが分散してしまう。1人が忙しい時にヘルプに入れない。商品の仕入・発注・経理等の事務作業がそれぞれのお店が必要になる。そして土地購入して新築すると初期コストが多くなり、お店が2拠点になるのでラーニングコストも上がり、ゆくゆく実家が空き家になったら解体のコストもかかる。
次に考えたのは、実家の化粧品店兼用住宅(おじいちゃん家)を3世帯住宅+化粧品店にリノベするパターン。
良い点は上記の問題が解決してトータルコストが1000万以上も安く済む事。
一方、両親と同居は距離が近すぎるので生活の完全な分離が必要、家が古いので出来上がりの想像がつかず本当に出来るか不安、耐震や断熱、それ程大きくない平屋なので必要な部屋が入るのか心配等の不安な気持ちがあるとの事でした。
新築の問題点はU設計室では解決できないけれど、リノベの不安な気持ちは設計で解消できる内容だったのでリノベで提案をさせて頂きました。
ただ、元々の大きさは変えずに子世帯・親世帯・店舗で面積のせめぎ合いをしつつ、敷地も比較的狭い中で家族3台+お客さん2台の合計5台の車を駐車するスペースや内外の動線の整理をするという、なかなか難易度の高い計画だったので、ハイジさん家族一緒に何度も打合せを重ね、悩みながら少しづつ進めて「これ!!」って決まった時は感動がすごかったです!
そんなハイジさん家のビフォーアフターはこんな感じです。
長年潮風にさらされて傷みが出てきた外壁とセメント瓦
海沿いの地域なので、瓦屋根と杉板の外壁はそのまま引き継ぎ、周囲と馴染む色使いにして小浜の素敵な景観に馴染みの良い外観にしました。
2世帯と店舗という事で車が家の前に4台駐車できるようにする必要があり、住宅と店舗のアプローチ壁際に通しています。
元の親世帯の玄関は半外部の様な形だったので1部を内部化して
子世帯の玄関としました。土間から直接子ども室に入れるようになっており、現在高校生のお子さんが巣立った後はこの部屋が貸店舗になる予定です。
今回の店舗は小売りがメインではなく、業者販売や販売員さんの育成がメインになるので、ここが次の販売員さんやエステシャンさんが小さなスタートを切れるトライアルの場としたい。とのハイジさんの想いからこの配置になっています。
元の和室リビングと廊下の壁を取り除き、
広いLDK+小上がりにしています。
天井は既存の梁を隠すため緩やかに傾斜しており、内外の目線が合わない高さで配置したシンボリックな窓に目線が絞られるつくりになっています。
リビング横の小上がりは飲食店を経営する旦那さんがレシピや経理作業をするスペース。リビングから見えづらい位置にたくさん収納を設けています。
廊下にあったキッチンは物を置くスペースが無かったり寒かったりしました。
キッチンはダイニングと対面式にしてカウンター越しに配膳出来る形にしました。
パントリーは奥さんがキッチンで家事をしながら仕事をすることや、家で友達と飲み会をしたときに飲みながら料理を出す方なので、 キッチンの動線 ・事務スペース・パントリーの機能を持たせて奥さんの基地になっています。
ちなみに元のお家が大垣家から徒歩2分にあったので何度か家飲みに呼んでいただいたのですが、酔拳の様に酒飲みながらバンバン料理を出してくる料理じょうご?状態は圧巻です。
洗面はオレンジベースの空間に緑と青の扉というカラフルな空間。
トイレも切り替え方だけ変えて、同じイメージにしています。ヒアリングで好きな雰囲気の画像を共有してもらった際、攻めた色使いの画像が多かったので思い切って提案して気に入ってもらいました。
お風呂は湯舟につからないご家族なのでシャワーユニットにして費用の節約ポイントにしています。湯舟につかりたい日は隣のおじいちゃんの家に仮に行く方式
もう一部屋の子ども室はお子さんがインテリアに興味を持っておられる中学生なので、壁紙は自分で選び家具と素敵にコーディネートしてくれました。
寝室はハイジさんの好きな雰囲気に合わせて一部、モリスの壁紙にしています。
中庭デッキは、おじいちゃんの家とハイジさんの家で共有できる配置になっています。洗濯物等を干しっぱなしに出来る様に屋根付きの空間にしています。
おじいちゃん家は、DKとおじいちゃんおばあちゃんの部屋、トイレ、洗面、ユニットバスをコンパクトにまとめつつ、ライフスタイルの変化に合わせておじいちゃんとおばあちゃんの部屋はつなげても使える様に可動間仕切りで区切っています。
ミキモト化粧品の店舗は、主力商品のみ展示できるようにし、主に売り子さんの研修やエステに特化したシンプルなスペースにしています。
モルタルのカウンター後ろに元の店舗の外壁を再利用することで思い出を残しつつお店の雰囲気に変化を付けています。
手洗いとトイレは白をベースにしつつ黄色でスパイスを利かせています。
エステルームはお客様が主人公になれるような特別な空間にしたいとのお話や
理想の空間が ハウルの動く城に映るソフィーの帽子屋さん。という事だったので
ハウルの色調や窓を空間に取り入れた少し異世界な落ち着けるエステルームに。
今回のお家は、既存建物の大きさを変えずに1家族分のスペースを追加するという計画でした。
計画の過程で2世帯と店舗の数センチのせめぎ合いやおじいちゃん世帯の仮住まいへの引っ越し、利用する建物の片付けなどハードルは多かったですが、ハイジさんが中心になって優先順位を付けながら1つ1つ一緒にハードルを越えていけたので実現できました。
大変だった分、コストは抑えられ家族の生活に寄り添った本当に良い家になったと思います。
今回のケースは建て主の方が、何度も根気強く家族会議を重ねて納得のいく間取りをつくれた事、1期工事で家をつくって店舗を移転し、店舗も完成したら再移転するという、最初の仮住まいへの引っ越しも合わせて3回の引っ越しに耐えてくださった事など本当に施主さんの努力のたまものだと思います。
でも、本来家づくりってそのぐらい時間と労力をかけて当たり前な位大きな買い物だと思っています。
冷蔵庫を買うように展示品を見て短期間でパパっと出来る時代ですし、それも良い部分は多いと思うのですが、
新築を建てて10年後に実家が空き家になってしまったら誰が維持するのか、子どもの進学のタイミングで解体が必要になって進学資金に苦慮しないか?両親が同居する可能性もあるから今はアパートでいいのではないか?など資金計画や建てるタイミングを丁寧に考えて家づくり出来る様にとなりでサポートできる専門家や地域の工務店とゆっくり家づくりするケースが増えると、
空き家が増えないし家づくりする人の懐事情がよくなる事になり、もしかしたら浮いたお金が子どもの教育資金に回って奨学金に頼らない進学や、その後の生活の向上など未来への投資になるかもしれません。
今U設計室で動いているプロジェクトも住み継ぎ系のリノベが2軒あり、こちらもとても素敵な施主さんと丁寧に家づくりが進行中です。
家づくりってその後の人生にとっても大きな影響を与える事なのでいろんな選択肢を持って取り組む人が増えるといいな。って思います。
まだブログに書けていませんでしたが、昨年設計をお手伝いした【まちまち案内所】で毎週月曜日の13:00~17:00に出張U設計室としてお家の相談窓口を開いています。
設計を依頼するかどうかに関わらず、今持っている家の事、これからの家づくりの事等大垣に相談してみたい方はお気軽に遊びに来てください。